『ヴァイマル憲法とヒトラー──戦後民主主義からファシズムへ』 (岩波現代全書) 池田 浩士 著

  • 2015.07.08 Wednesday
  • 13:12

『ヴァイマル憲法とヒトラー   戦後民主主義からファシズムへ』 (岩波現代全書)

  池田 浩士 著 

   ⭐⭐⭐⭐⭐

   明確な問題意識を持った力作

 

 

扱っているものが歴史なので、
同時期に出版された『ヒトラーとナチ・ドイツ』(講談社現代新書)と、
内容は重なるところがありますが、
最終章が「遙かな国の遠い昔ではなく」となっているように、
池田は現在の日本の状況と照らし合わせることを意図して書いています。

問題意識が高いため、優れた考察も目立ちます。

当時は先進的であったヴァイマル憲法を持ちながら、
ヒトラー政権を誕生させてしまった人々の心情について、
「いま現在についての絶望や怒りであるよりは、むしろ、
迫りくるものについての不安や危機感なのです。」
「ナチズムは、こうした予感的あるいは予防的な危機感を、
いわば未然に吸収し組織したのではないでしょうか。」
という池田の分析は示唆に富んでいます。

また、ヴァイマル憲法には基本的人権をないがしろにする独裁権限、
「大統領緊急命令条項」が存在していたことについても、
「弱者に対しては傲慢に振る舞い、そのくせ権威に頼らなくては生きられず、
皇帝を無条件で尊崇する、権威主義的なドイツ人」が、
絶対的な拠り所を必要としたためではないか、と鋭い分析をしています。

 自分たちが平等な関係の中で自主決定しなければならないはずの
 困難な課題に直面したとき、その解決を絶対的な権威に委ねてしま
 うというありかた、「臣下」あるいは「臣民」の習性が、ヴァイマル
 憲法の第四八条にその痕跡を残してしまった

池田はこのような「臣民」根性が日本人にもあると考えています。
日本は権威主義が強く機能している国だというのは僕も同感です。

本書の分析で独特だと感じたのは、ナチズムとボランティアの関係です。
池田はボランティアからファシズムへという流れでナチズムを捉えています。

 ナチズムが文化革命だったのは、ドイツの歴史の中で、さらには
 人類の歴史の中で、初めて、全面的な「参加の文化」を創出した
 からでした。しかもその参加は、自発的な、自由意志による主体
 的な参加を起点としていたのです。

とはいえ、自発的な労働はそのうちに強制へと変化するので、
あくまで「起点」が自発的であったというだけのことです。 
僕個人としては「自発的参加」が悪なのかどうかは判断しかねました。

池田は最終章で、痛烈な日本政府批判を展開します。
(明瞭に政治家の名前を出すことは控えられていますが)
歴代の日本政府はヒトラーもやらなかったことをしているというのです。
その内容はぜひ本書を読んで確認していただきたいと思いますが、
これは歴史事実と歴史事実を比較して確認できることなので、
右とか左とかのイデオロギーによる発想ではありません。

ポストモダンによる非歴史的な発想が支配的になり、
その弊害があちこちで噴出している今、
ようやく歴史に学ぶ態度が出始めていることは歓迎すべきことだと思います。

 

 

 

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