『ヒトラーとナチ・ドイツ』 (講談社現代新書) 石田勇治

  • 2015.07.06 Monday
  • 13:04

『ヒトラーとナチ・ドイツ』 (講談社現代新書)

  石田勇治

 

   ⭐⭐⭐⭐

   歴史を学ぶことに今を紐解くヒントがある

 

 

歴史を学ぶと必ずつきあたる事実があります。
作用と反作用のように、ある方向に進むと必ず反動が起こるということです。

憲法や自国民の意志決定を軽視した安倍政権や、
それを案外許容している国民の現状を考えるときにも、
国民の意志による民主党政権誕生とその失望への反動を無視することはできません。

そのような反動のモデルケースとしてナチ・ドイツを考えることにも意味があると思います。

さて、石田が本書で最も重視している問いは、
議会制民主主義を否定し、ユダヤ人差別を公にしていたナチ党が、
なぜドイツ国民に支持されるようになったのか、ということです。

石田はヒトラーが大統領ヒンデンブルクから首相に指名されるまでの駆け引きを丁寧に説明し、
ヒトラーの首相指名は、ナチ党が議席を減らした選挙でなされたので、
勢いが衰退した局面で起こったものだと言います。
つまり、選挙で多数派になってヒトラー政権が誕生したという単純な図式ではないというのです。

ただ、そうはいってもヒトラー政権の前半期は国民の支持は高いものでした。
石田はその原因を、ドイツの大国意識の高揚感や失業対策の成功などに求めています。

僕が興味深かったのは、
ナチ党が勢力を拡大したのは、共産主義への危機意識だという点です。
石田はヒトラーのユダヤ人敵視も、
ユダヤ人が共産主義運動の中心にいると考えていたからだとしています。

ヒトラーがユダヤ人=共産主義と考えていたかの真偽はわかりませんが、
共産主義によって起こるかもしれない変化への危機意識が、
民主主義を捨て去るという同程度の変化を招き入れてしまうという皮肉は、
まさに保守反動の力の大きさを示していると感じました。

一方の変化を極度に恐れる心が、
もう一方の変化を相対的に軽いと思わせてしまう。
共産主義が形骸化した国の脅威を訴えることで、
保守を自認する勢力が社会に好ましくない変革を導き入れる。
このような手口を、麻生太郎の発言にもあったように、誰かさんが学んだわけではないでしょうが、
結果として今の日本がそのような局面に立たされていることを、
本書を読んで考えるのは大切なことに思えます。

 

 

 

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