『日本の反知性主義』 (晶文社) 内田樹/白井聡/高橋源一郎/小田嶋隆/その他 著

  • 2015.03.23 Monday
  • 22:49

『日本の反知性主義』 (晶文社)  

  内田樹/白井聡/高橋源一郎/小田嶋隆/その他 著

 

   ⭐⭐

「反知性主義」という語を旗印にするのはやめた方がいい

 

 

最近「反知性主義」という言葉を使った本が増えています。
白井聡が言い始めてできあがった流れだと思いますが、
「反知性主義」関連の本をいくつか読んだ結果、
この言葉を使い続けるのは非常に悪い風潮だと感じています。

まず、「反知性主義」という言葉が示す内容が不明瞭なのが問題です。
僕は「現代思想」2月号の反知性主義特集のレビューでも指摘しましたが、
「反知性主義」が何なのかは本書の執筆陣にも共有されていません。
赤坂真理は「実は「反知性」という言葉が私にはわかりません」と本書で告白しています。

他にも、反知性主義について語ると自分が知性主義だと言っているようで居心地が悪い、と
高橋源一郎はこの言葉に及び腰になっていますし、
実は自分にも反知性主義的態度があるのではないのか、と
小田嶋隆や想田和弘は誠実であるために葛藤しています。
利口な平川克美と鷲田清一は、「反知性主義」という言葉を一度も使っていません。

このように執筆者を悩ませる「反知性主義」という言葉を使う意味は何なのか、
誰でも疑問を感じそうなものです。

しかし、その中で前のめりにこの言葉を使っているのが、
言い出しっぺ(?)の白井聡と本書のボスである内田樹です。
この二人はちょっと前に対談本を出していますので、
本書の中心にいる存在だと考えてよいでしょう。

そこで、さらに問題なのが、
この二人が「反知性主義」について語っていることにも、
矛盾が見られるということなのです。

内田は知性とは集団的だとか、反知性主義は無時間だとか、
独特のロジックを断言的に用いていますが、
名越康友との対談ではもう少しわかりやすく、
「死者との共感」や「身体を通した直感知」が必要だと述べています。

白井は「反知性主義」を「啓蒙主義の物語の放棄」として捉え、
「否定的なものの否認」として整理しています。
そこでは近代啓蒙主義による主体から
幼児的全能感を旨とする「ネオ主体」(立木康介からの引用)への変化という、
主体性の破壊が問題とされています。

両者の主張のどこに矛盾があるかというと、
内田は〈フランス現代思想〉に影響を受け、近代的主体を解体する
反近代主義であるのに対し、
白井はヘーゲル的な主体を再評価する近代主義であるということにあります。

白井は「敵対性の否認」を問題としていますが、
彼の主張の内容からすれば、
〈フランス現代思想〉に享楽した左翼による主体破壊を批判する必要があるはずです。
それなのに、〈フランス現代思想〉の罪に関しては「否認」をしています。

外部には偉そうに言っていても、
自分は仲間内の左翼に対しては「敵対性の否認」をしてしまっているのです。
白井聡の知性もこの程度か、と僕は少々幻滅しました。

内田の「オレサマ節」には、それほど何か言う気にはなりませんが、
ひとつだけ疑問を提示するとすれば、
彼の主張する「身体を通した直感知」は、ヘイトスピーチ体験と一致する可能性があるということです。
共感する人々と共に歩き、共に大きな声を出す。
その身体的共感体験が、自らの主張の正しさを直感知として強化しているのではないでしょうか。

また、「死者との共感」というなら、
靖国参拝をする人たちや特攻隊を美化する人たちとの差がよくわかりません。

もちろん内田はそういうつもりで主張しているわけではないでしょうが、
自らの主張が裏返るとどうなるか、ということを考えることも知性だと思います。
ミイラ取りがミイラにならないように、細心の注意を払うべきでしょう。

最後に、「反知性主義」という言葉を使うことを問題にする理由を書きます。
多くの人々がそれぞれ勝手な意味解釈をする言葉というのは危険です。
(専門的に言うと「シニフィエなきシニフィアン」というものに近づきます)

この前「聖域なき構造改革」という言葉がありました。
「聖域」の意味を曖昧にすることで、
自分に都合の良いように勝手な想像をした人々を広く動員することができます。
これこそ「想像の共同体」を形成するメカニズムだと思います。
(ちなみに最近の政党名はシニフィエなき普遍的シニフィアンばかりです)

遠くでは「八紘一宇」「五族協和」なども同様です。
「反知性主義」という旗印を用いることは、
敵の武器を用いて戦うことになりかねないと、僕は真剣に危惧しています。

 

 

 

評価:
内田樹,赤坂真理,小田嶋隆,白井聡,想田和弘,高橋源一郎,仲野徹,名越康文,平川克美,鷲田清一
晶文社
¥ 1,728
(2015-03-20)

calendar

S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< January 2019 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM