『対人距離がわからない』 (ちくま新書) 岡田 尊司 著

  • 2018.06.14 Thursday
  • 23:25

『対人距離がわからない』 (ちくま新書)

  岡田 尊司 著

 

   ⭐

   この本との距離がわからない

 

 

人間関係において、人との適切な距離感がイマイチつかめないという悩みは多くの人にあるものだと思います。

その結果、距離感に悩まない内輪の相手とばかり付き合うことも起こるわけですが、

「ほどよい対人距離」を保つだけではリスクは避けられるが何も生まれない、と岡田は言います。

本書では対人距離を縮めて相手を味方にするタイプがどのようなパーソナリティなのかを、

岡田の臨床データをもとにして示していきます。

 

岡田はアメリカの精神医学会の診断基準DSM–犬亡陲鼎い謄僉璽愁淵螢謄・タイプを分類しています。

つまり、もともと精神障害の分類でしかないものを、個人のパーソナリティとして当てはめています。

回避性パーソナリティ、妄想性パーソナリティ、シゾイドパーソナリティは社会適応度が低く、

演技性パーソナリティ、自己愛性パーソナリティ、強迫性パーソナリティは適応度が高い、などと統計データを出して、

このタイプがどうだ、あのタイプがどうだ、という話を延々と続けます。

 

それぞれのパーソナリティについては岡田の別の著書に詳しいらしいのですが、

所詮は精神障害の分類ですので、人間のパーソナリティを表すには一面的で薄っぺらく、

自分自身でどのタイプかと判断するには、当てはまらない部分が多く出てきます。

したがって、医者が患者の病状をどこかに当てはめていくように、

他人のことを表面的にどこかのタイプに分類して済ますことにしか役立ちません。

岡田も石川啄木やハイジ、赤毛のアンや野口英世、ルソーやオノ・ヨーコたちの都合のいい部分を取り上げて分類に役立てます。

正直に言って、自分自身のことを知りたければ、占いの方がまだ役に立つような気がします。

 

取り立てて社会適応が高い演技性パーソナリティの幸福度が高いというデータがあるため、

第6章の「対人距離を操る技術」で演技性パーソナリティの人のあり方を「技術」として紹介するのですが、

そもそもパーソナリティとして成立しているものを「技術」として扱うのは無理があります。

当然ながらその特性を「技術」として身につける方法については岡田は全く語っていません。

 

もともとが精神障害をパーソナリティ化したものなので、それを模倣することが本当に良いことなのかも疑わしいと思います。

たとえば岡田は演技性を正当化するために、社会的知性の本質は演技であるとか言い出して、

 

ふりをして、相手にそう信じ込ませること、つまり演技することが、社会的知性の本質であり、本当の頭の良さということになるのである。それは、あまり暴かれたくないことかもしれないが、現実を動かしている真実なのである。

 

とか書いているのですが、社会をナメているとしか僕には思えませんでした。

なるほど、「本当の頭の良さ」を持つ岡田は、こんな役に立たないパーソナリティをいかにも役に立つように演技して書いているのでしょう。

 

優れた社会的知性は、人間関係において大事なのは、正しいかどうかではなく、相手も喜び、こちらも得することだと考える。つまり、相手の自己愛をくすぐることが、自分も愛されるだけでなく、恩恵を手に入れる方法だということを体得しているのである。

 

こういう調子のいいことを言ってお互いいい気持ちになるのが円滑な社会関係だという低レベルの話を、

「優れた社会的知性」などという言葉で語ることには不愉快さしか感じませんでした。

僕は精神科医をあまり信用していないのですが、こういう本を読むとなおさらそういう気持ちが強くなります。

岡田自身の自己満足データの与太話に付き合いたい人だけに本書はオススメです。

 

 

 

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