『現代思想 2017年8月号 特集=「コミュ障」の時代』 (青土社)

  • 2017.09.01 Friday
  • 19:16

『現代思想 2017年8月号 特集=「コミュ障」の時代』

  (青土社)

 

   ⭐⭐⭐⭐

   本当に日本はコミュニケーション圧の強い社会か

 

 

本誌の特集は「コミュ障」となっていますが、
精神医学の分野でのコミュニケーション障害だけでなく、
「コミュニケーションに不器用」という広く社会的な視野で論考が寄せられています。

劇作家の平田オリザは以前から一貫してこのような問題について提言を行ない、
演劇による実践プログラムも行なっているため、発言に非常に説得力がありました。
サブカル作品を例にとって「コミュ障」文化を系譜的にまとめた樫村愛子の論考は、
紹介する作品の選び方もすぐれていて、その分野への明るさを感じました。

オープンダイアローグについて対談や論考で取り上げられていましたが、
読んでも「複数でやるのか」くらいしかピンとこない感じで、
僕には理解できたかといえばちょっと怪しい感じでした。

大黒岳彦の論考は、吉本隆明の「共同幻想」などをふまえて、
〈社会の外部〉の消失をテーマに社会の変化を描き出していました。
相変わらずのカギカッコを多用する書き方は読みにくい人もいる気がするのですが、
内容そのものは非常に興味深いものでした。
「対幻想」的な二者関係をN・ルーマンの〈親密システム〉として把握したあと、
そのような「純粋相互行為」という〈社会の外部〉がSNSによって消去されつつあるとします。
SNSは「対幻想」を〈自己幻想〉へと内部化してしまい、最終的に〈社会幻想〉へと回収してしまいます。
インターネット上で生み出された〈社会幻想〉が生成する基準から外れた者は「コミュ障」と判定されるのですが、
その〈社会幻想〉への対抗策はまだ見つかっていないとします。

以上、なかなか充実した内容だと思うのですが、
気になったのが、現代の日本がコミュニケーションの圧力が強い社会だという了解です。
(討議での千葉雅也や斎藤環などがそう発言しています)
本当に今の日本はコミュニケーション圧の強い社会なのでしょうか?
日本に来た外国人が、日本ほどコミュニケーションをせずに生活ができる社会はないと発言したのを聞いたことがあります。
「阿吽の呼吸」や「空気を読め」などでも明らかなように、
日本は同質性により非言語的な「コミュニケーションなきコミュニケーション」を発達させてきた社会です。
そもそも言語的なコミュニケーションが少ない社会であった日本が、
ある程度国際標準レベルに近い言語コミュニケーションを求められるようになっただけだと僕は思うのですが、
これを「コミュニケーション圧が高い」とか「コミュニケーション偏重社会」などと表現するのは違和感を感じざるを得ません。

また、「討議」として掲載されている國分功一郎と千葉雅也は特集とそれほど関係が深い研究をしている人とは思えません。
(本誌で平田オリザは価値観が近い親しい者同士のおしゃべりを「会話」と定義しているので、
これは「討議」でなくて「会話」と言うべきなのでしょうが)
この雑誌はことあるごとに千葉雅也を掲載したがるので、僕はその不適切な関係を説明してほしいと何度も書いているのですが、
「現代思想」編集部は何も返答をしてくれたことがありません。
(僕にとっては「現代思想」編集部こそがコミュ障ではないかと思っているのですが)

相変わらず千葉雅也の発言は自己を省みない口先だけのものが目立ちます。
二人はわかりやすい「エビデンス」を重視するあり方を批判して、
それを言葉の価値の低下と捉えています。
この批判自体は僕もその通りだと思います。
つづいて國分が「この場合のエビデンスは何なのでしょうね。
世の中では数字とか言われているけれど」と発言すると、
千葉は「多様な解釈を許さず、いくつかのパラメータで固定されているもの。
もちろん代表的には数字です。それに対して言葉というのは、解釈が可能で、
揺れ動く部分があって、曖昧でメタフォリカルです」
と答えてエビデンスにはメタファーがないとか言い出すのですが、
このように偉そうにメタ的に語っている本人がエビデンス主義に則って他人を侮辱していたりするのです。

 千葉雅也 『勉強の哲学』毎日新聞で書評 @masayachiba

 読書好き、研究者の間では、アマゾンの低評価レビューは基本アホが
 書いているので全無視というのが常識なのだけど、世間的にはあれに
 意味があると思ってしまう人もいるっぽいから厄介だ。読書術の基本
 事項。アマゾンレビューに建設的な批判などめったにないので、無視
 する。プロの書評を読むこと。
 午後9:30 · 2017年6月6日

 千葉雅也 『勉強の哲学』毎日新聞で書評 @masayachiba

 僕も本を買うときにアマゾンを参考にするときがあるが、低評価レビ
 ューはほとんど「読めてない」レビューなので苦笑いしながら読むし
 かない。参考にすべきは、詳細に書かれた高評価レビュー。これは知
 識の基本スキルだと思う。
 午後9:33 · 2017年6月6日

 千葉雅也 『勉強の哲学』毎日新聞で書評 @masayachiba

 今の話は、自分の本のレビューについて言っている自己弁護だろ、と
 思われるかもしれないけど、そうではなく、プロの間では共有されて
 いる常識です。しかし、一般にはあまり明確に認識されてないかもし
 れない。
 午後9:36 · 2017年6月6日

これは千葉雅也が自著『勉強の哲学』のAmazonレビューに低評価のものが並んだことに耐えられず、
Amazonレビュアーをツイッターで侮辱した文章です。
批判をする人を単に「アホ」呼ばわりする態度も教鞭をとる身として不適切ではないのか、
と彼を雇う立命館大学に尋ねてみたい気もしますが、
それ以上にAmazonレビューの「低評価」というのは、星がいくつついているかという「エビデンス」による判断だということが問題です。
一般の人に向けて「プロの常識」として、Amazonの低評価レビューはまともな批判はほとんどないから無視しろ、
とツイートしているその「低評価」の基準は、
一般の人にとっては間違いなく星の数になるはずだからです。

星の数は数字というパラメータと何ら変わるところはありません。
千葉自身がレビューの内容(当然言葉によるものです)を無視して、
数字というパラメータでレビューを判断しろとツイートしているくせに、
この「会話」ではしたり顔でそういう行為を批判してみせるのです。
こういう無責任極まりない発言をする人間を「現代思想」は殊の外好んでいるわけですが、
もう一度本誌編集部に尋ねますが、どうして千葉雅也を知識人のような扱いで起用したがるのですか?

さらに指摘させてもらえるなら、
本誌の山森裕毅の論考では、F・ガタリの「制度分析」が扱われていますが、
山森は「制度分析」は集団は言葉をつかまえる装置だとし、
「集団総体を相手にすることが求められ」る「集団をひとつの主体として接する態度」だとします。
集団内での区別を減らすことにより、集団内の横断性を高めて、集団において豊かな言葉をつかまえるというのです。
その上で山森は、「それに対して、外部からその集団の健全で正常な人を選別して声をかけるのは、
集団内に病者/正常者の分断を引き起こすことにつながるだろう」と述べます。

千葉がやっていることはAmazonの中で自らに都合のいい「健全な人」を選別して声をかける態度です。
これは集団の横断性を阻害し分断を引き起こす、ガタリ的には好ましくない行為であるわけです。
千葉はガタリの翻訳をしていたはずですが、相変わらず自分自身はメタな位置に保存されたまま、
読んだことを自身に反映させることもなく、単なる知識として語るだけの存在、
つまりはただ本に書いてあることを語るだけの「口パク学者」として活動しているようです。

千葉に代表されるように、日本の〈フランス現代思想〉の著名人は現実から逃走しメタに立つことで、
ナルシシズムを巨大化させることを正当化してきました。
今回の千葉と國分の話でも、「貴族的」であることが一つの結論として語られていました。
ここで言う「貴族的」とはもちろんメタ的であることを言い換えているだけのことです。
まったく進歩のない人たちだと感じます。

國分功一郎も自分大好きという点では千葉雅也に負けないようで、
2012年に講談社のインタビューにマルクスを刺繍したシャツで現れて、
「伊勢丹メンズ館で見つけた時、『これを着るのは俺以外いない』と思いましたね(笑)」
などと語っていたのですが、
そんなマルクス好きな人が「貴族」とか言うわけですから、
彼らが思想家をいかにアイドルか何かと勘違いしているかがよくわかります。
もう〈フランス現代思想〉発のアイドルたちの勘違いはたくさんです。
歌唱力のないアイドルを起用しなければ「口パク」は必要なくなると思うのですが。

 

 

 

評価:
國分功一郎,千葉雅也,平田オリザ,斎藤環,信田さよ子,森川すいめい,武田砂鉄,貴戸理恵,綾屋紗月,上岡陽江,磯崎新
青土社
¥ 1,512
(2017-07-27)

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