『足利尊氏』 (角川選書) 森 茂暁 著

  • 2017.04.26 Wednesday
  • 21:10

『足利尊氏』 (角川選書)

  森 茂暁 著 

 

   ⭐⭐⭐⭐⭐

   古文書による実証研究で描く尊氏像

 

 

室町幕府を開いた足利尊氏は、源頼朝や徳川家康にくらべて不当に悪く扱われてきました。
その原因は明治44年に南北朝のどちらが正統かという南北朝正閏論にあるようです。
論争の結果、南朝が正統ということで教科書記述が統一されたため、
足利尊氏は「逆賊」という扱いをされるようになりました。
僕自身も野蛮な武者の画を足利尊氏像として教えられてきた世代です。
政治的な思惑を離れて、歴史的に妥当な尊氏像を描き直すことは非常に意義深いことだと思います。

森はこれまでの尊氏研究とは異なり、古文書などの一次資料の活用した実証的アプローチをとります。
これまでの研究は『太平記』『梅松論』『神皇正統記』などの物語、史論に偏っていたため、
書き手の主観的な見方に影響されるという問題がありました。
そんな二次資料だけでなく袖判下文や御教書などの古文書によって、
森は新たな足利尊氏像を描き出すことを試みています。

尊氏の人生を考えるといくつかのターニングポイントがあります。
源氏の一員にもかかわらず、後醍醐天皇の倒幕運動に加担したこと、
その後醍醐天皇と袂を分かって北朝を立てて幕府を開いたこと、
二人三脚だった弟の足利直義との抗争(観応の擾乱)に至ったことなどです。
森は尊氏の和歌や古文書などを読み解きつつ、この辺りの成り行きを描き出していますので、
興味のある方はぜひ読んでいただきたいのですが、
全体として森は尊氏像を「逆賊」イメージから解放する方向で考えています。
しかし、それも決定的という印象ではなく、まだ多くの説が出てくる余地がありそうに感じました。

また、尊氏が庶子だったため父が死去するまで家督を継げなかったことや、
足利直冬が実際は尊氏の息子であったことなど、
新しく知ったことも数多くありました。

本書は足利尊氏の人物像を描くことが中心になっているので、
細かな歴史背景や武士の土地統治のあり方や幕府の制度史的なことなど
政治的な面についてはあまり触れていません。
そのぶん歴史マニアでない僕にも読みやすい本でした。

 

 

 

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