『ブルジョワ 近代経済人の精神史』 (講談社学術文庫) ヴェルナー・ゾンバルト 著

  • 2017.04.11 Tuesday
  • 10:43

『ブルジョワ 近代経済人の精神史』 (講談社学術文庫)

  ヴェルナー・ゾンバルト 著 

 

   ⭐⭐⭐⭐

   資本主義への精神的アプローチ

 

 

ヴェルナ−・ゾンバルトは経済学を歴史的に捉えようとした点で、
マックス・ヴェーバーとよく比較される存在です。
資本主義の精神についてはヴェーバーがプロテスタンティズムをその源流とみなしたのは有名ですが、
ゾンバルトはカトリシズムとユダヤ教を重視し、プロテスタンティズムは資本主義の敵と考えています。

本書は第1巻と第2巻の二部に分かれています。
第1巻では資本主義精神をいろいろな角度から描いています。
金銭を求める営利衝動の分析にはじまり、
企業精神のあり方、資本主義企業の起源や基本タイプを考察し、
加えて市民の美徳が資本主義精神に関係していることも明らかにします。

ゾンバルトの研究範囲の広さや長大な分析には圧倒されますが、
さらに興味深いのは第2巻の方でした。
後半は資本主義精神の源泉を多様な観点から描き出しています。
これも観点の多様さと分量において十分に読み応えがあります。

第十六章では生物学的な部分に踏み込み、
資本主義の原素質を持つ民族としてエトルリア人、フリースランド人、ユダヤ人を挙げています。
ユダヤ人と資本主義については、ゾンバルトにはユダヤ人と経済生活 (講談社学術文庫)という別の著作がありますが、
環境論はともかく血統論を持ち出すあたりは恐れ入ります。

十九章では前述のカトリシズムについて語られます。
ゾンバルトはカトリックの倫理に「生の合理化」を見出し、
これが経済的合理主義を促進したと述べます。
特に性生活の制限が浪費を抑制し、家計に秩序を与えること、
怠惰を罪とすることで勤勉と節約をもたらすことを強調します。

それに対し二十章ではプロテスタンティズムに触れて、
それが資本主義の利益追求をいかに排撃したかが語られます。
続く二十一章でゾンバルトはユダヤ教がカトリック以上の合理主義であることを示し、
さらに同胞には利息を禁じ、外国人には利息を許可するユダヤの法が、
外国人から法外な利益を得ることを不道徳と感じさせないため、
営業の自由を発展させたとしています。

それから国家や移住、技術について触れたあと、
資本主義自身が資本主義精神を発展させる点にまで考察が及びます。
個人的には異端者という地位が経済能力を発展させるという考察が、
〈フランス現代思想〉と資本主義の接点を示していて面白かったのですが、
そんな興味深い考察がどこかに潜んでいるような本です。

ゾンバルトは最後に資本主義精神が人口過剰の減少には勝てないと書いています。
百年前の本ですが、今読んでも得るものが少なくない本だと思います。

 

 

 

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