『トルコ現代史 - オスマン帝国崩壊からエルドアンの時代まで』 (中公新書) 今井 宏平 著

  • 2017.02.17 Friday
  • 15:34

『トルコ現代史 - オスマン帝国崩壊からエルドアンの時代まで』 (中公新書)

  今井 宏平 著 

   ⭐⭐⭐⭐

   トルコの政治状況を理解するのに絶好

 

 

近年のトルコはエルドアン大統領とその出身母体であるAKP(公正発展党)が権力を強め、
イスラム色を強める反動的な方向へ向かっています。
「オスマン帝国崩壊からエルドアンの時代まで」という副題の通り、
このような事態に至るまでのトルコの現代史をまとめたのが本書です。

著者の今井はトルコの外交が専門なので、
本書の内容はほとんどが政局と外交の動きに集中しています。
トルコ史に無知だった僕が読んでみた感じでは、
オスマン帝国が倒れてトルコ共和国が誕生し、1960年のクーデターが起こるまでの時期
つまりは本書の最初の導入についていくのが大変でした。

次々に人物名や政党名が出てきて、全体像がつかめず整理ができないのです。
困って年表でもないかと巻末をめくったところ、
主な政党の系譜が年表化されている図を発見し、
それを参考にしながら読み進んだところ、理解が容易になりました。
予備知識がない方は巻末の図表を参照して読むのがおすすめです。

僕のような知識不足の人間を相手にするのであれば、
現在のエルドアンのことを考える上でも、
トルコ共和国がイスラム教という宗教色を政治から遠ざける「世俗主義」をとってきたことは、
もっと整理して提示し強調してほしかった気がします。
初代大統領のムスタファ・ケマルが6本の矢で示した理念に世俗主義もあるのですが、
多くの理念の一つとして書かれているだけですし、
トルコの軍部が伝統的に世俗主義を守護する役割をしてきたことは、
書かれてはいますが、もっと強調してもいい気がしました。
(それがオスマン帝国に対抗する動きであることも)
軍がケマルの理念を引き継ぎ、世俗主義を擁護してきた図式が理解できれば、
軍部のクーデターのイメージも一般的なものと違ってきますし、
何よりエルドアンの公正発展党がイスラム主義を強める背景に、
軍の力の弱体化があった理由や、
エルドアン支持にオスマン帝国への憧憬が結びつくことがわかりやすくなるのではないでしょうか。

クルド人の問題は時々ニュースで聞こえてきたりしますが、
本書ではかなり充実して記述されています。
大統領のオザルがクルド人であったことは知りませんでしたが、
クルド・ナショナリズムを基盤に武力闘争を行うクルディスタン労働党(PKK)についても、
本書でその輪郭を初めて知った気がします。

外交ではソ連との関係、アメリカやEUとの距離などについて語られています。
トルコのEU加盟は長らく問題になっていますが、
時期ごとにその交渉を取り上げ、なかなか進展しない理由が示されています。

後半は現在の政権である公正発展党について詳しく書かれています。
本書は代表的な政治家の出自をしっかり説明するのですが、
エルドアンがイスラム教の導師であるイマームの養成学校の出身であり、
神秘主義との関係も深い人物であることなどを知ることができます。

最後はエルトゥールル号事件など、日本とトルコの関わりに触れて終わりますが、
今井が執筆に2年近くかかったと言うように、力作だと思います。
ここまで詳しい歴史を知りたかったわけでもないのですが、
途中からは面白くなってグングン読み進めていけました。

 

 

 

calendar

S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< July 2020 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM