『日本文法体系』 (ちくま新書) 藤井 貞和 著

  • 2016.12.06 Tuesday
  • 21:59

『日本文法体系』 (ちくま新書)

  藤井 貞和 著 

 

   ⭐⭐⭐⭐⭐

   古典文法の新たな視野

 

 

僕は長らく藤井貞和の詩人としての顔しか知りませんでしたが、
数年前から古典文学の研究者としても注目するようになりました。
本書は藤井流の古典文法が文法書のような体裁でまとめられていて、
学校で習う古典文法との比較がしやすいようになっています。

メインは助動辞(助動詞)の解釈に置かれています。
藤井はkrsmの4音を軸に据えて立体的に助動辞を捉えます。(帯の図を参照のこと)
krsmは「き」「り」「し」「む」に対応し、そこから音韻的に助動辞の構成を考えるのが藤井の特徴です。
たとえば「き」と「り」の融合で「けり」が、「き」と「む」の融合で「けむ」が生まれるという具合です。
音韻変化の可能性から考えるのか詩人らしい着眼点だと感じました。

藤井の説はたいへん刺激的で、首肯できるところが多いのはもちろん、
これまでの文法で腑に落ちなかったところを説明できることもありました。
個人的に感心したのは、
反実仮想といわれる助動辞「まし」が過去の「き」の類縁にあるという指摘です。
たしかに両者の活用を並べてみると似ているんですが、まったく考えもしませんでした。

他にも助動辞「き」と動詞「来」、助動辞「けり(動詞「来り」から発展)の元は同一語だったとか、
「ななり」「あなり」の伝聞推定「なり」は「なりなり」「ありなり」と終止形接続するとか、
過去の助動辞「き」と「けり」、完了の助動辞「ぬ」と「つ」の違いなど、
徹底して考え抜かれていて非常に参考になります。

藤井の説が学校文法として採用されることは難しいと思いますが、
文法というものは後付けで作られたものであり、
固定化するべきものではなく、日々別の道も模索されるべきものだということを、
本書を読んで思い起こすことは重要なことだと思います。

 

 

 

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