『憲法に緊急事態条項は必要か』 (岩波ブックレット) 永井 幸寿 著

  • 2016.03.17 Thursday
  • 18:35

『憲法に緊急事態条項は必要か』 (岩波ブックレット)

  永井 幸寿 著 

 

   ⭐⭐⭐⭐⭐

   自民党は永遠に権力に居座れると思っている?

 

 

安倍晋三は前々から憲法改正に言及していますが、
改正した憲法に緊急事態条項を加えようとしていると聞いて、
それってワイマール憲法がヒトラーの独裁を許す原因になったものじゃないか、
と驚いて本書を購入してしまいました。

緊急事態条項(国家緊急権)の必要性を訴える側としては、
地震などの災害やテロなどの緊急事態に対応するため、
というのが理由であるようです。
しかし、災害やテロ対策として考えたときに、
緊急事態条項の必要性はないというのが本書の立場です。
(まあ、題名を見ればだいたい想像できるでしょうが)

国家緊急権とは、非常事態において国家の存立を維持するため、
憲法の秩序(人権や権力分立)を一時停止するというもので、
濫用されると国家権力を著しく強めてしまう危険なものでもあります。

本書には大日本帝国憲法のもとで国家緊急権が濫用された歴史が書いてあります。
(そのため日本国憲法では設けていません)
前述したようにナチスのようなケースもあり、
危険な面があることを無視するのはおかしなことなのですが、
自民党の緊急事態条項案は内閣への権力集中、人権制約をもたらし、
権力の濫用が可能となる危険なものになっているようなのです。

永井が緊急事態条項を不必要と考える理由は、
内閣に権力を集中するより現場の自治体の権限を強める
現行憲法の方が災害の対応には適している、
そもそもテロは国家緊急権が発動する「非常事態」ではないし、
すでにテロに対応する法制度は存在している、という現実的なものでした。

僕が興味があったのは他の国の国家緊急権がどうなっているのか、という点でしたが、
永井はドイツ・フランス・イギリス・アメリカを例に挙げ、
それぞれを明快に説明しています。
これを読めば、「緊急事態条項はどの国にもある」という主張が、
論点のズレた主張だということが理解できると思います。
自民党案はそれら4国と比べても格段に危険な面が野放しになっています。
(このあたりは実際に本書を読んでいただきたいところです)

永井の説明は十分に冷静で説得的なので、
この本をしっかり読んだ上でのまともな反論というものは難しいのではないでしょうか。
おそらく、この主張に文句を言う人は非論理的な態度をとることでしょう。

これは僕個人の疑問ですが、
権力が非常事態を宣言して緊急事態条項を濫用し、
内閣に権力を集中して独裁体制に近づけることができるようにするとして、
自民党はそれを自らが行使するとなぜ確信できるのでしょうか?
自分たちが逆にそれによって潰されるとは思わないのでしょうか?

もちろん、思わないのでしょう。
これは自民党の憲法案を支持する人たちも同様です。
なぜ自分たちが権力を行使する側だと確信できるのでしょうか。

永井は国家緊急権が絶対王政と同じ構造を持つと書いていますが、
それは世襲で権力が受け継がれる時代の発想とも言えます。
安倍晋三を代表として、自民党の政治家には世襲議員が少なくありません。
この事実が、身分制度の時代のように自分の権力者としての地位を、
揺るぎなき確固たるものと思わせてはいないでしょうか。

自分の権力者としての地位が不動だと思っているからこそ、
危険な条項を憲法に組み入れても自分が行使する側だと信じられるのではないでしょうか。
僕にはすでにこの発想が反民主的なものに思えてなりません。

自民党の方々には、憲法改正をするにしても、
他党の政権が緊急事態条項を行使することまで想像して、
新しい憲法案を考えてほしいものです。

 

 

 

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