『競馬感性の法則』 (小学館新書) 角居 勝彦 著

  • 2017.04.23 Sunday
  • 21:29

『競馬感性の法則』  (小学館新書)

  角居 勝彦 著 

 

   ⭐⭐⭐⭐

   なかなか聞けない有名調教師の考えを「垣間見る」本

 

 

著者の角居は中央競馬のファンなら誰でも知っている有名な調教師です。
G1勝利数23は歴代3位で、牝馬でダービーを制覇したウオッカの育ての親でもあります。
個人的には、角居は師の藤沢和雄とともに競馬の調教に革命を起こした調教師だと思っています。
勝負の仕上げとなれば強い調教をするのが一般的だった時代に、
折り合い中心の調教をしたり、3頭併せをしたりして、
予想を難しくしてくれたものです(笑)

本書はそんな有名調教師が競馬について語った本です。
(「週刊ポスト」の連載をもとにしているようです)
第1章は角居がG1レースごとに解説などをしていますが、
予想に役立つ情報という視点ではなく、
多くは自分が管理した名馬たちの思い出を語っています。
そのため、それらの馬を知らない人には面白くないかもしれません。
ただ、今年からG1になる年末のホープフルステークスについては、
角居の疑問が遠慮なく語られていて、興味深いところがあると思います。

第2章は重賞レースが対象ですが、前章とそう変わりません。
第3章は競走馬の1年を語っていきます。
調教師が馬を勝たせるために何をやっているのかが理解できます。

第4章は競馬界に携わる人々について述べます。
たとえば角居はジョッキーについて「こんな過酷な生業もありません」と言います。
騎乗に失敗すればファンから罵声が飛び、全国からネットなどで呪詛が寄せられます。
それでも観衆の前に出なくてはならないからです。
それも自分の責任と受け止める彼らは真のプロだと僕も感じます。
(それに比べて著書に批判レビューを書かれたくらいで文句を言う売文屋のいかに多いことか!)

調教について語っている部分はやはり興味深く読みました。
「走らせすぎない」ことが重要というのは、まさに角居らしい信念だと感じます。

第5章では競馬の予想についてちょっと語っています。
パドックの見方や返し馬の重要性など、
角居に言われると自分が間違っていなかったことが確認できて役立ちました。
ただ、地上波のテレビ中継ではG1以外はパドックで全馬を映すことさえなくなり、
代わりに芸能人の予想コーナーを拡大させる始末で、
狙っている馬の返し馬が満足に映るかといえば難しいところです。
競馬場で返し馬を見るにしても、全体は見渡せないので映像を見ることになってしまいますので、
購入締め切りが近づく中、狙った馬が映らない焦りとの戦いには苦労します。

角居は厩務員が馬に好かれるのに対し、ジョッキーや調教師は嫌われると書いています。
馬にとってつらいことを強いているからではないか、ということですが、
なかなか切ない商売だと感じました。

 

 

 

『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』 (中公新書) 本村 凌二 著

  • 2016.09.02 Friday
  • 08:14

『競馬の世界史 - サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで』 (中公新書)

  本村 凌二 著

   ⭐⭐⭐⭐⭐

   競馬マニアも納得のガチ歴史

 

 

古代ローマ史が専門の歴史学者が趣味(?)の競馬を歴史的アプローチでまとめた本です。

僕自身20年来の馬券師ですが、血統派でないこともあって競馬の歴史には無知でした。
サラブレッドがアラブ馬やターク馬(トルコ産)をもとにイギリスで誕生したことも、
明確には知りませんでした。
(そういえば、昔はアラブ限定のレースが中央競馬にもありましたね)

サラブレッドの3大始祖というのが、
バイアリーターク、ダーレーアラビアン、ゴドルフィンアラビアンだそうで、
ダーレーとかゴドルフィンとか、今でも聞く名前が出てくることに驚きます。
ドバイの王族が競走馬を所有しているのは石油バブル的な趣味かと思っていましたが、
もともと競馬はアラブにルーツがあったのですね。

そのダーレーアラビアンの系統から1764年にエクリプスという怪物が生まれます。
現在のサラブレッドの父系をさかのぼると、9割がエクリプスに至るそうで、
同一親族で競争をしているのが近代競馬ということになりますが、
エクリプスが勝ったときに2着は視界にもなかったという強さには驚きました。
(とはいえ、当時のレースは6400mも距離があったわけですが)

個人的にはダービーよりオークスの方が1年早く誕生しているのも興味深かったです。
3歳という未熟な馬を走らせると予想が難しいという発想からこれらのレースが生まれたという話は、
競馬がいかにギャンブルと切り離せないかを示している気がしました。
(現在の日本ダービーがなぜか内枠に人気馬が集まり固く収まりがちなレースなのは皮肉ですが)

日本の血統派に馴染み深い馬もたくさん紹介されます。
ハイペリオンやニジンスキー、ミルリーフ、ノーザンダンサーなどがどんな戦績だったか手軽にわかります。
ダンチヒがたった3戦(全勝)で引退していたことも初耳でした。

歴史学者の本村らしく、「世界史」している内容にも感心します。
イギリスでサラブレッドが生まれた当時は、世界的にはドイツの方が上で地位は低かったとか、
フランスがイギリスに対抗するためイギリス馬の輸入に努めたとか、
アメリカでは短距離馬が隆盛したとか、南米や日本にも視野を広げていて、
書名に違わぬ内容の濃さには競馬マニアも納得するのではないでしょうか。

日本では16年間馬券の発売が禁止されていたというのも知りませんでした。
安田記念に名が残る安田伊左衛門の尽力で馬券の販売が復活したそうです。
有馬記念に名が残る有馬頼寧が戦後に公職追放されたのちに中央競馬会理事長になったなど、
レースでは何度もお目にかかった名前が実在の人物とリンクするのも楽しいです。

副題に「21世紀の凱旋門賞まで」とあるように、
現在の日本競馬の悲願は凱旋門賞の制覇のようです。
オルフェーヴルの惜敗はスミヨンの故意の早仕掛けが原因だと僕は疑っていますが、
本来は騎手も日本人で制覇する方がいいように思います。
短期免許のフランス人は信用できないから、イタリア人騎手を日本所属にする発想もわからないではありませんが、
種牡馬の輸入で日本馬は強くなっても、日本人騎手のレベルが上がらないと、
真の意味で日本の競馬文化が成熟していることにはならない気がします。

 

 

 

 

『騎手の一分──競馬界の真実』 (講談社現代新書) 藤田 伸二 著

  • 2013.08.25 Sunday
  • 11:22

『騎手の一分──競馬界の真実』 (講談社現代新書)

  藤田 伸二 著

 

   ⭐⭐⭐⭐

   社台グループについてもっと語るべきでは……

 

 

近年の競馬界の衰退を憂いた人気騎手の「ぶっちゃけトーク」です。

全体に面白い本なのですが、僕が不満なのはこのところの武豊の成績が良くない原因についてです。
藤田は「エージェント制度」がその原因のように語っていますが、
若手騎手が育たないという問題は理解できますが、武豊の不振の原因としては納得しにくい気がします。
藤田はこの本の中で近年の大手クラブの台頭を図表で示しています。
が、それについてはあまり触れたがりません。
彼らはルールを守っているから、JRAが悪いという書き方でした。
たしかに悪くはないのかもしれませんが、今の競馬の状況として触れておくべきでしょう。

ハッキリいえば、今の競馬界は社台グループの独占が進んでいます。
少なくても、G1に関していえば、武豊が勝てなくなったのは、
社台グループの馬に乗らなくなった(乗せてもらえなくなった?)ことが一因でしょう。
1年のG1のいくつを社台生産馬が勝っているか、みなさんは知っていますか?
オルフェーヴルもジェンティルドンナもフェノーメノも同じクラブの馬ですよ。
相撲でいえば同部屋対決です。
そこで本当に真剣勝負が生まれるでしょうか?
数年前のオークスなんてフルゲートのうち10頭以上が社台生産馬でした。

強いなら仕方ないということはわかりますが、釈然としないものが残ります。
今年はロードHCやノースヒルズもがんばっているので、例年よりはマシな状況です。
社台グループはサンデーサイレンスを持ち込んだ日本競馬界の功労者ですが、
JRAはそのために彼らに媚びたりはしていないのでしょうか?

そのあたりを藤田にはぶっちゃけてほしかったのですが、望みすぎですよね。
内部の人にしては相当忌憚なく話している印象です。

本当はジャーナリズムが取材して明らかにすべきなのですが、
JRAに認可されたエージェントは競馬新聞の記者(または元記者)だという話。
競馬新聞の記者はJRAと露骨につながっているんですね。
まだまだ競馬界は謎に包まれた世界だと思います。

 

 

 

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